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「小さな命を助けたい」もう一つの命・・・コロナ禍に漂うペットを守る人たちの苦悩
【フジテレビアナウンサー島田彩夏】
岩手の保護団体にはコロナ関連の相談も相次ぐ
感染者のペット預かりの依頼も
全国で唯一、いまだに陽性者が報告されていない岩手県(5月14日現在)で活動する『動物いのちの会いわて』の下机さん。彼女のもとへ、他県で新型コロナウィルス患者の治療にあたる医師から電話がかかってきた。
「陽性になったひとり暮らしの患者さんが猫を飼っていらして、家を出る時に2週間分の餌と水を置いてきたんだそうです。でもまだ陽性で、あと2週間、今度は軽症者施設にいなくてはならなくなってしまい、困った患者さんから相談を受けたお医者さまがうちに連絡をくれたんです」
聞けば、その家には10匹もの猫がいるという。下机さんは頭を抱えた。
「東日本大震災の時は、私たちは福島にもレスキューに行きました。でも今回は感染症ですから、簡単には行けません。もうダメかもしれないと危ぶみましたが、結局、現地の保健所に相談して患者さんの家の消毒をしてもらってから現地のボランティアと連絡を取り合い、餌と水をあと2週間分置いてきてもらいました。猫たちは、今回はなんとか生きていました」
しかし、と下机さんは言う。「こういうことが、これからはどんどん増えてくると思います」。確かに、ひとり暮らしでペットを飼っている人は多い。現在のところ感染者のいない岩手県でも、感染者が出た時のための医療従事者の要請リストに入っている人たちから、ペットを預かってほしいという依頼もきているという。
『動物いのちの会いわて』では、本来こういった預かり事業はしていないが、家族がいない場合に限り引き受けているという。「安心して働いていただくために、私たちが今できることをやらせていただきます」と語る下机さんだが、寄付や寄付金が減り続ける中で月々300万円かかる維持費用を今後どうするのか、頭を抱えている。
下机さんの団体は、猫180匹と犬30匹を施設で保護している。9人のスタッフで世話をするのが精いっぱい。そんな中で自分たちが感染してしまうことが、今一番恐ろしいことだという。
「もしそうなったら別のもう1組、ボランティアを募ってやってもらうしかないです。でも、施設が汚染されているので消毒をしたとしても完全にされているかどうか。次に入るボランティアさんの安全を守れるかどうか、計り知れない不安が毎日あります。ですから今は、最低限の活動に制限してやっています。新しいボランティアの申し出があったとしてもお断りしている状況なんです」
現状ではもう保護できるキャパシティはないのだが、保健所からは、いつもと変わらず引き取りはできないだろうかと依頼が来るという。確かに例年、『動物いのちの会いわて』で引き取る年間300から400匹のうちの半分は行政からで、この施設を当てにするのも無理はないだろう。
また、この頃は保健所も様子が変わって、慣れない技術員から「また入ったんです…」と相談があるという。ただでさえ少ない保健所の職員が、どんどんコロナ対応に派遣されていて、動物保護の現場がとても手薄になっているようだと下机さんは指摘する。保健所の現場も混乱を隠せないのだ。
「私たちはすべての生き物を同じ命として扱っています。すべての生き物に、感染も含めて直接コロナは関わってきていると感じます」
穏やかだった下机さんがにわかに厳しい表情に変わる。「自分の行動が人はもちろん、動物すべての『命』にかかわるので、ぜひルールを守った日常生活をすることをお願いしたいです。そして、一度迎え入れた動物は、最後まで自分の家族として見守ってほしい」
新型コロナウイルスに翻弄される小さな動物たちの命。動物保護の活動にも大きな影を落としている。
コロナ禍の影響で金銭的に苦しくなり、もしかしたら動物を捨てる人や飼育放棄が増えるかもしれない。そしてこのまま動物の保護が進まない状況が続けば、殺処分の数が増える可能性は十分にあるだろう。何十年も動物の保護活動を続けている下机さんの最後に言った言葉が、胸に刺さっている。
「これは試練なのでしょうか。早く収束してほしいです」
【執筆:フジテレビアナウンサー 島田彩夏】